2012年8月25日土曜日

20年ぶりのメンタルクリニック


静寂に包まれた工業団地を抜けると
緑豊かな田園地帯が広がる
この辺りは行楽地ということもあって何度も観光バスとすれ違った
今朝ぼくが初診に訪れたメンタルクリニックは深緑の木々の中にポツンと建っている
2階建ての古びた木造住宅
看板が出ていなければ病院には見えないが
他に大きな建物が無いから迷うことはなかった

はじめまして
ぼくの主治医となるF先生は初老の男だった
この人にだけは嘘をつくことはやめよう
ぼくが抱えている厄介な心の重荷について正直に話そう
対人恐怖症のこと
場面緘黙症のこと
回避性パーソナリティ障害のこと
今までぼくがどのような気持ちで生きてきたか
ぼくの心の闇をすべて話した
ぼくの重荷は鬱病の症状ではない
もっと複雑で治療困難な訳の分からぬもの
それが何かを知りたい
できることなら治療して楽になりたい
まともな人間になりたい
そう願いながら短い時間に一生懸命話した

「・・・鬱病だと思いますので軽い薬出しておきます。様子を見てまた来てください。」
予想していた通り主治医はぼくに鬱病という判断を下した
こうなることはだいたい予想できた
ぼくみたいに逃げ道を探して助けを求め
病院を訪れるメンヘルおじさんは他にもたくさんいるのだろう
ぼくはそのメンヘルおじさんの中のひとりに過ぎない
元気がないおじさんが来診すれば「とりあえず鬱病」
焼肉屋で「とりあえずビール」みたいな
そんな感じなのだろう
短い診療時間ではぼくの真実はわかってもらえなかったと思う
この医者はぼくの話を聞いていなかったのだろうか?とも思う
あれだけ苦しんだのにその病名が軽い鬱病なんて
ぼくには到底信じられない
でもまあいいかな
今は薬を飲んでひと眠りしたい
軽い薬で副作用は少ないとF先生が言っていた
診察費は安かった
少しでも快復してくれれば儲けものだ


薬をてのひらにとりジッと見つめる
精神科医からもらった薬を飲むのは20年ぶりになる
20年ぶりに飲む心の薬
若いぼくの身体を滅茶苦茶にした憎い薬だ
あの頃も最初は軽い薬だった
通院を続けるにつれて薬の種類が増え量も増えていった
太る薬 眠くなる薬 唾液が出なくなる薬 精力がなくなる薬
肥満 過眠 意識朦朧 虫歯 勃起不全・・・
強烈な副作用に苦しみ
薬の強い依存性と戦い続けた
あの地獄のような日々
ぼくは20年ぶりに戦地に帰ってきてしまった
平成24825
ぼくはこの日を忘れないようにしよう
医者から貰う薬の怖さ
どんな薬にも副作用があり依存性がある
医者を過信して薬漬けにされないように注意しなければならない
ぼくは誓う
それを絶対に忘れてはいけない

不器用な手で慎重に薬を飲む
今新たな戦いがはじまった

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